人と企業に幸せを~ビジョリータ通信 Vol.4

[パーソナルブランディング]

 これから小さな会社を創ろうという方たちに是非気に留めていただきたいことがあります。それは、小さな会社は経営者がブランドということです。雇われるという経験を長くやってくると、会社と、そこに雇われている自分は別物という認識が当たり前になるのですが、小さな会社の経営者は、自分というキャラ以外のところに会社のキャラを置くことはできません。小さな会社はスケールメリットやコストで勝負できないわけですから、差別化要因は「自分」しかないわけです。そこでパーソナルブランドという考え方が有効になってきます。パーソナルブランドは、起業する人、雇用される人、それ以外の人すべての人に存在していますが、特に会社を創る人は、そのブランドがビジネスの成否につながるという意味で特別な色合いを持っています。

 

 私は中小企業のクライアントを対象に、ブランディングの仕事を長らくやらせていただきました。ブランディングというとかなり幅広い意味合いを持つのですが、そのなかでも、差別化要素を創り込み、それを伝えるというマーケティングの側面で多く関わってきました。

  マーケティング戦略は<ターゲティング>+4P<Product(商品)、Price(価格)、Place(販路)、Promotion(販路開拓)>というフレームワークで語られます。商品やサービスを誰に売るかという対象を決め(ターゲティング)、その対象にあった4つのPの組み合わせを考えるというのが大まかな流れです。

 

 ブランディングの場合は、最後のPがC(=Communication)に代わります。Promotionという一方的な情報の発信ではなく、会社と市場が双方向で情報をやりとりする=communicationことで、この両者の中間に、双方にとって好ましいイメージを創ろうというのがブランディングの目的だからです。そのイメージがあるから、消費者はまた買いたいと思い、会社側はそのイメージを強化するような情報発信や商品の開発を継続します。こうしてターゲットとなるお客様をファン化して顧客生涯価値を上げていくのがブランディングの目的です。

 

 会社と消費者の間に置く好ましいイメージ、その中核となる考え方は、マーケティング戦略で言う4Pの最初の3つ(商品・価格・販路)の上流概念としてあります。それは「コンセプト」と言い換えることができます。

 

[コンセプトの考え方]

 コンセプトは、2つの方向から考えることができます。一つは、仕事をする上での、もしくはお客様と向き合うときの軸となる考え方(A)、もう一つは、他の同じような事業者とどのように差別化していくかという考え方(B)です。

 

 (A)は経営者もしくは会社の内面にある強い思いや問題意識を掘り下げていって見つけ出すことができます。私はいつも「やりたい仕事」×「あなたの強み」×「問題意識」の3つの要素の掛け算で考えることをお薦めしています。

 

 対して(B)は冷静に自他を観察し、差異を見つけ出すものです。3C分析やSWOT分析など環境分析のフレームワークが使えます。また自分とライバルのマーケティング戦略を、ターゲティング+4Pの枠組みの中で比較対象してみることもできます。こうして見つけた(A)と(B)の重なり合うところに、独自のブランドコンセプトが生まれてきます。

 

 パーソナルブランディングは起業する人だけでなく、会社の中でキャリアを積む人にも適用できます。組織の中では組織の意向が優先されますが、自分の得意とするスキルを活かした働き方や仕事の仕方の方向にもっていくことは可能です。

 

 さて、ここまで、ブランディングにおけるコンセプトの話をしてきましたが、実は好ましいブランドイメージを創るためには、あと2つ重要なプロセスがあります。1つは「シンボル化」というプロセスです。

 

たとえ素敵なコンセプトができたとしても、それがターゲットとする人たちに効果的に伝わっていかなければ意味がありません。そのために必要なのが、コンセプトをシンボル化して伝わりやすくするという工程です。

 

 シンボル化の手段としては、主に言葉とデザインの2つがあります。言葉はコンセプトを凝縮して一言で伝えるキャッチフレーズのようなものが該当します。デザインはマークやキャラのデザインなど視覚に訴えるものです。受け手に感情的なインパクトを与え、共感を呼び起こすことが、良いシンボルの条件です。

 

 そして最後が先にも触れた「コミュニケーション」=伝える、のプロセスです。パーソナルブランドのコンセプトを表現する端的なシンボルができたら、それを繰り返し伝えていくこと。そして、対象となるお客様などとの接点で、コンセプトと一貫性のある商品・サービス、行動、働き方をしていくことが、このプロセスに該当します。

 

 パーソナルブランディングを突き詰めると、生き方の軸を定めて、それに沿った仕事の仕方、働き方、他とのかかわり方をしていくということだと思います。その一番の効能は、自分が納得できる生き方や働き方を選択できる点にあると思います。

 

 次回はパーソナルブランドのコンセプトを見つけるいくつかのワークを紹介します。


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