創業の2つの側面

 創業というと経済的な側面にばかり目が行きがちですが、もう一つ大切な側面があります。それはその人の人生の中軸を成すキャリア開発を支援しているということです。私はもともとキャリアコンサルティングに関わっているため、創業支援をスタートした時から、このことを実感していました。そういう意味では創業は、就職や転職と並ぶ、人生の大きな選択肢の一つ、と言えます。ただし就職や転職して獲得するポジションが「雇用される」位置づけであるのに対し、創業は雇用関係から離れて自ら立つ必要があります。自営業者のことを英語でself-employedと言いますが、まさに自分で自分を雇用し自己動力で進んでいくしかない点が、創業の厳しい一面と言えます。

 創業の経済的側面に目を向けると、私たちはお金に関する教育を満足にされていないことに気づきます。自分自身を振り替えってもそうですが、創業相談に来られる方の中にもそういう方がいます。派遣社員で働いていて年収が300万しかないので創業したい。でも自己資金がないから銀行からお金を借りたいのだけれど、どうしたらいいのか…?持ち家や親の財産やらがあれば話は別ですが、そうでない場合は、そうそう簡単にことは運びません。こんな状態になる前に、自分の人生やキャリアを考える機会はなかったのだろうか。このあたりの知識を持つことが、生きていくことの基本スキルになるのかもしれません。