コンサルティングコラム

第8回 掌の上の社員

中小企業の社長と話をしているとよく「受け身社員」の問題が話題にのぼります。「言ったことは忠実にやるけれど、自分から何か提案して動く社員が少ない」というお話し。この後に続くのは日本の教育の負の側面について、です。

 

小学校からずっと画一化された教育システムのなかで、「正解」があるという前提で物事を教え込まれてきた私たち。ただ「受け身」であるだけでも膨大な情報が注ぎ込まれ、その記憶の度合いを中心にテストされた学校時代。そしてどんな人の能力も、国語や算数や理科などの教科が求める尺度でしか測られず、その良し悪しで将来の選択肢が決まってしまうという真実。

 

私など学校時代を思い出すと胸が苦しくなるほどの閉塞感が蘇ってきます。ああいやだ、あの黒板の匂い、下駄箱の寒々しさ…。もちろんよい思い出もたくさんあるのですが、何か他の人と違うことをやるとまずいという横並び意識はこの頃に培われたのかもしれません。

 

さて、これだけ変化の激しい時代になると、どんな企業も将来を見通して、常に次の手を探っていかなければなりません。すると今まで枠に嵌められて、周囲の期待に沿うべく淡々と仕事をしてきた従業員たちは、いきなりクリエイティブになることを求められます。「今の事業が先細りなので、次の事業のアイデアを出して欲しい」とか、「次の会社の柱になる商品を考え出して欲しい」とか、青天の霹靂のような指示が社長から降ってきて、どうしていいかわからない。でも多くの働く日本人は真面目なので一生懸命考え、その一生懸命さが却ってあだになって規定の枠から抜け出せないといった悪循環が起こります。

 

私が「中小企業の社長は幸せだ」と思うのは、こんなときです。中小企業は学校ではありませんから、お上の意図に沿った規定の枠を作る必要もなく、自分でルールを決め、その一国をマネジメントしていけます(もちろん法律は守りますが)。学校教育やその後の会社生活でさんざん失われてしまった従業員のクリエイティビティを取り戻す機会を提供することができるからです。

 

尊敬する中小企業の社長が「社長の仕事は社員が気持ちよく働ける環境を整えること」と言っていました。その掌の上で気持ちよく働く社員が、会社の業績を上げていってくれると信じきることが大切だと感じます。