コンサルティングコラム

第27回 残業の仕組み

「働き方改革」が叫ばれるなか、業務量は変わらないのに残業削減を強いられて、「却って苦しい」という声があちこちから聞こえてきます。とある会社では、残業対策として「不要業務を洗い出し、やめる」という手を打っても、「知らないうちにまた業務が増えている」という現象に悩まされていると聞きました。残業は、個人の能力の問題にされがちです。もちろんその要素があるのは確かですが、日本における残業は「構造問題」である点に着目しないと、いつまでも一過性の残業対策や中間管理職の業務抱え込みにならざるを得ません。

 

立教大学の中原淳教授は著書「残業学」のなかで、日本の残業は2つの「無限性」から生み出されたと言っています。ひとつは「時間の無限性」、もうひとつは「仕事の無限性」です。時間の無限性は36協定に起因します。働き方改革法により月の残業上限は最大100時間となりましたが、実際に運用されるかどうかは不透明です。「仕事の無限性」は、日本人の働き方と関連しています。日本人はあいまいな職務既定のなかで働くことが多く、どこまでが自分の仕事かがわかりにくいという側面があるといいます。

 

またプレイングマネージャーが増えて部下の管理に時間が割けなくなったことから、「仕事が確実にできる部下」に仕事が集中したり、誰かが忙しく残業をしていると、「無能」と思われたくないために(あるいは余分な仕事を振られたくないために)直近の仕事がなくても付き合い残業をしたり、といった現象は多くの会社でも見られるでしょう。またかつて残業をものともせずバリバリと働いていた上司は、「残業なくして成長も成果もなし」という意識が強く残り、同じことを部下に要求するケースもあると想像されます。

 

こういった現実から少し距離を置いて自分たちのあり様を見てみると、本当に注力すべきは、「いかに残業を減らすか」ではなく、「自分たちはどういう風に働き、お客様や社会の役に立ちたいか」という視点ではないかと感じます。そのためにはベーシックですが「組織のあるべき姿」の明確化と、「そのためのアイデア出し」そして「実践」と「検証」が必要です。

 

アインシュタインは「いかなる問題も、それをつくりだした同じ意識によって解決することはできない」と言いました。残業問題も残業時間だけにフォーカスしていては、いつまでも同じところをぐるぐる回っているだけでしょう。でも、もう少し大きなスケールでとらえることができれば、新しい解決方法が見えてくるはずです。