コンサルティングコラム

第24回 人が先か、組織が先か

戦略が組織に従うのか、組織が戦略に従うのかは、経営戦略を考えるときの重要なテーマです。戦略ありきで、その遂行に適した組織を作るのか、現状の組織あるいは人の構成を前提として戦略を組み立てるのか。前者がアメリカ的、後者が日本的、といった分析をする記述も見られます。私は当然、「戦略が組織に従う」という視点に立ちます。人材を重視し、その能力を最大限に引き出すことが利益創出につながるという考え方であれば、人や組織は所与の条件となります。

 

ここでもう一つ問題になってくるのが、「人が組織に従うのか、組織が人に従うのか」という視点です。私の立ち位置は後者、人の強みや個性に合わせて組織を編成すべきという考え方です。

 

このコラムでは何度も申し上げているのですが、過去の経験が将来の戦略に有効に働いた少し前の時代においては、組織の形態にあわせて人の配置を考える合理性は非常に大きかった。分業体制をつくってある分野に専門特化した人材を育成することで、製造ライン式に同じような製品・サービスを効率的に送り出す考え方の妥当性は高かったのです。

 

ところが、現在は、過去の経験は将来を創造するネタとして簡単には使えなくなっています。むしろ個々の人が現場で感じる小さな気づき、今までであれば無視されていた小声のつぶやきが、将来大きな差を生むきっかけになる可能性が高まっています。組織形態にしても、一人のリーダーが考えた戦略を他のメンバーが手足となって実現しようとする旧来の分業体制では、環境変化のスピードに追いつけません。しかもメンバーは手足であるだけなので、与えられた戦略にコミットするだけのモチベーションも持ちあわせてはいません。

 

過去において強い合理性を持っていた「強いリーダー」+「分業」の体制がいまや機能しなくなっているとしたら、その逆、つまり、個々のメンバーが主体性をもって、その強みを活かした活動を行い、それをある一定のガイドラインによって統制し、環境変化に対応していく方法のほうが、組織全体の存続には適しています。そして、こう考えると、「組織が先か、人が先か」の議論は、「人が先」という結論であるべきなのです。

 

いまや一人一人がそれぞれの感性でキャッチした変化や気づき、そしてそこから生まれるアイデアを、どのように育成していくかに、企業の存続が関わっています。その行為は同時に一人ひとりの組織へのコミットメントを引き上げていくことにもなります。

 

何か新しいアイデアが社員から出てきたときに、頭ごなしに否定したり、過去の類似の失敗例を引き出してきて、意欲を削ぐのはやめたほうが得策です。新しいアイデアは玉石混交ですが、兎にも角にも現状を打破する宝の芽が潜んでいる可能性もあるわけですから。