コンサルティングコラム

第20回 方法論に振り回されない

見込み客を新規顧客にかえ、一見の客をリピーターにかえてロイヤルカスタマーに育て上げる。顧客生涯価値〜一人のお客様から得る価値〜を最大化するためには、じっくりとお客様を育てる姿勢が必要です。この「育てる」という行為について、私たちは「何をすれば育つか」という視点でアプローチをしがちです。たとえばポイントカードを作れば、一見の客がリピート客に育つ、とか、ABC分析でAランクに位置づけられた顧客に、バーゲン情報を前倒しで知らせるなどの特別待遇を提供すると、購入頻度の非常に高いロイヤルカスタマーに育つとか。

 

これら「育てる」ための方法論は、考案した人たちの経験に根ざして「効果がある」と考えられているものです。しかし実際に導入してみると、ポイントカードを発行している店舗が多すぎて、消費者の財布に入りきれず持ち歩いてもらえないとか、バーゲン情報を前倒しで教えても、バーゲンだけに来る客は長期的な利益をもたらさない、とか、言われているほどの効果を得ることができず、やっぱりうまくいかないという感想を抱くケースが多いのではないでしょうか。

 

ここで注意しなくてはいけないのは、表面的な方法論に振り回されないということです。方法論が生まれた背景にある顧客の心理的な側面に注目し、そこから時代や環境に合わせた、しかも会社の強みが活かせる顧客育成の方法論を新たに立ち上げるべきです。注目すべきはお客様の心の動きや、生活全般にわたる課題や、嬉しさなどです。さらには「なぜ、当社の商品・サービスをもっと使わないのか」といった、心理的なバリアへのアプローチです。

 

会社と顧客という対立関係ではなく、顧客の心理と深くシンクロして、相手側の視点から、まっさらの気持ちでこちら側の商品やサービスを眺めてみる。すると、顧客が特定の商品に手を出さない理由やリピート購入しない理由が仮説として見えてきます。これが見えてきたら、その仮説を覆すようなアイデアを考案し、少しずつ試してみる。うまくいかなければ別の案を試し、うまくいけば、独自の消費者育成法として定番化することを考えます。

 

これらの一連の流れを会社の仕組みとして確立できれば、顧客の変化に敏感な感度の高い組織に変わっていくことができます。その前提としては、どんな些細なことでも口に出せ、許容されるポジティブな雰囲気や、良好な人間関係が構築されていることが必須です。