コンサルティングコラム

第3回 幸福な人の生産性

近年、急激に幸福に関する研究が進んでいます。幸福と言った途端に、宗教や心理学など心の世界を想像する人が多いとは思うのですが、幸福と生産性といった実に縁遠そうなものを結びつけた研究が進んでいます。

 

人事に詳しいかたは「ハーズバーグの動機付け・衛生理論」というと、「ああ、あれね」と思い出していただけると思います。アメリカの臨床心理学者フレデリック・ハーズバーグが提唱した理論で、働く人の満足と不満足を引き起こす要因はそれぞれ別のところにある、という考え方です。いわく、働く人の不満足は「給料が低い」とか「職場環境が悪い」といった「衛生要因」によって左右され、これらのマイナス要因が解消されると不満足も解消されるが、満足の領域までは達しない。では働く人を満足させる要因は何か、というと、もう一つの「動機付け要因」がくるわけです。

 

「動機付け要因」というと思い出すのはマズローの欲求5段階説です。人の欲求は生理的欲求、安全欲求、社会欲求、承認欲求、自己実現欲求という5つの欲求の層から成っていて、下位の欲求が満たされると上位の欲求に移行するというあれ。このうち、上位の欲求が動機付け要因と呼応して、働く人の満足度アップに貢献します。

 

こうした理論において「幸福」はこれまで、埒外に置かれていました。その理由は「幸福」というものが実に主観的で、同じ環境に置かれても人によって「幸福」と感じたり「不幸」と感じたりするからです。最近の幸福研究は幸福の構成要素を明確にし、その基準を用いて、人が幸福であるかどうかを見ています。私も幸福度を指標化する調査票を用いて、働く人が幸福かどうかを計測したことがあります。このときに使った調査票はWHO(世界保健機構)が作成したSUBIというもので、幸福感を「陽性感情」と言い換え、計測しています。

 

こうして計測された幸福感の高い人は、そうでない人より生産性で31%、売上で37%、創造性で3倍高いという結果が出てきました。働く人の幸福感を高めておくことが、経営戦略の一つになりうる証拠と思います。

 

 

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